五月は 生命輝く子どもの季節
  生きる力の観察とみどり吹く風に感性養われて

2004年5月

園庭に、淡いだいだい色の柿の花が一面に散りしいて、両手にこぼれる花びらは子ども達のおままごとの材料になっている。
「この柿のお花ね、食べられるのよ」と言って食べて見せた。ほの甘く少し渋みの残る味が、幼い日への郷愁をさそい、想い出と共に口に広がっていく。

「つばな」の幼穂の甘さ、あぜ道の記憶までもよみがえったその時「これとったよ」と二歳児Jちゃんの得意気な声。入れ物の中には、ダンゴ虫が数匹とナメクジに、げじげじ虫。「これ全部J君が一人で捕ったの」「うん、これね、ビヨョーンビヨーンってうごくよ」

それはナメクジが体を伸ばして這っている様をこの上なくうまい表現で、私に説明してくれたのだ。Jちゃんが虫獲りなんて想像もしていなかった「あっ けんかしている、食べてる」ダンゴ虫とナメクジが絡まりあってもがいている様子に「どうしたらいいの」の心配顔。

「だいじょうぶだからみていてごらん」。じっと観察している午前九時。真っ赤な顔に汗がにじんで、木陰のみどりの風が心地よい。お集まりの時間までの園庭は、昆虫博士が木陰で虫捕り、土ダンゴを作る子、三輪車にお友達を乗せて勢いよく飛ばしていく子。柿の花を拾う子に「首飾り作ってあげようね」と約束した。去年咲いた朝顔が沢山芽をだし葉を広げている。

本館の庭では、真っ赤ないちごが採れだした。外に出るたびに、緑の葉陰の赤い実をのぞきこんではさがして、口に入れてもらっている。来年は、甘くて美味しい紅梅(ゆすらめ)を植えてあげたい。喜ぶであろう顔に重ねて私の夢はふくらんでいく。

「あーあーあっ」Sちゃんが突然呼んで、蟻の忙しそうな行列を指差した。自分の体の数倍もある荷物を引いていくのを一緒にしゃがみこんでながめ出すと、列から離れて後ろへうろうろ行ったり、また列に入ったりしている蟻の動きがおもしろい。

うっそうと茂った楠木の下枝をお父さん先生がはらったら、急に視界が開けて気持ちのいい日陰ができて赤ちゃんの園庭が夏待ち顔。アンズの粒が、急に大きくなった。薄桃色のヒラヒラしたブラックベリーの花、白い花が散ったラズベリーには、実がついた。去年成りすぎて枯れかかった柿の樹に新芽が出てきて最近発見しホッとした。

黄緑の葉にだいだい色のざくろの花が、雨上がりの空にあざやか。めぐり来る年と共に大きく育って行く子ども達と共に毎年待っている翠と花の五月は、昔から大人に成長の感動を与えて止まない子ども達の季節である。

 

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