心を育てる・・・「叱られて・とどく想い」・・・          

2002年2月

最近とても嬉しかったのは、Mちゃんを叱った時のこと。
Mちゃんは1歳児クラスの2歳児で、自分の好きな遊びに熱中すると、工夫してやり続ける集中力のある良い子ちゃん。でも苦手なのは、いろいろな決まり事を守ってみんなと何かすることで、お集まりや英語の時間も周りで見ていて入って来る事が困難な様子。おかたずけも遣りたくないし、気に入らないと玩具や本もなげたくなる。

生活のリズムの乱れも原因の一つかと思った。夜テレビを見て居て睡眠不足、朝は眠ったまま来ることもしばしばで、お母さんの悩みの種。私はいつかしっかり注意して上げたいと思っていた。Mちゃんはやれば出来る子だし、もうすぐ2歳児。今のまま我が儘を貫していたら大変と、ある夕方、本を投げた時Mちゃんに
「先生にちょうだい。本投げないでね」
「いや」
「ください」
「いや」
こんなやり取りを何度もしているうちに「やーだ」と大泣きになった。(自分のことを通そう)と決めた様だ。

私も今日はどうしてもこちらの言う事を聞いて貰おうと決めた。お母さんが帰ってきてもお互いに譲らず
「本破れるから投げないの」
「いや、お母さんがやって」 とばかり泣き声は高くなる。

「私が甘やかし放題だったのがいけなかったかな」 「働いているから悪いと思って言えなくて」
「そう、言いなり放題は駄目ね。教えてあげないと後が大変なの」
「自分の思いどうりにならないとホッペも叩くことがある」
「それはお母さんが悪いの。叩いてはいけないと言い切ってあげないとね」とお母さんも叱られるしまつ。Mちゃんは泣き疲れ眠くてもう限界。
「先生、今日は駄目かな」とお母さん。

(今日負けたら後がない)そう決めていた私は
「そうね、でもこのまま帰れないの。Mちゃん、明日又抱っこして上げるから本返して帰ろう」
「・・」
しっかり目を開け、私を見たMちゃんは、本を差し出して「ばいばい」と、さっぱりした幕切れになった。お母さんは「嬉しくて」と泣きだし、私も涙ぐんだ。夜8時のくらやみは3人の想いを包んだ。

心配していた私に爽やかな朝が来た。
「先生、昨日は遅くまでありがとうございました」
笑顔で挨拶して下さったのはお父さん。Mちゃんは元気に登園し、私に「僕、わかった」のサインをしに来た。英語もお遊戯もみんなの真ん中で楽しそうにやり終えて、今まで見せたことのない満面の笑みで甘えに来た。その余りの変わり様に事情を知らない担任は驚いたが、「Mちゃんを変えたのはお父さんお母さんの素直な心だ」と心から嬉しかった。

もうすぐ発表会。どのクラスも子ども達の熱のこもった練習が楽しそうに繰り広げられています。お陽様が差し込んで、暖房を切っても、汗だくだくの子ども達、「ないしょだよ」が、筒抜けでお家でも全員の分を披露してみせているとか。

先生は、今年も全員の衣装を縫ったり創ったりしています。子ども達も先生も力を合わせて取り組む中で、信頼や、我慢することや助け合う事を学んでいます。一人が自分勝手なことをしたら全員が困り、壊れてしまう事も自然のうちに学びます。こうしたイベントは子ども達に自覚と自信とを育てていきます。本番もさることながら、そのプロセスを大切にしたいと話しています。
2月23日をお楽しみに。

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